トップページ目次無職男の優雅な生活 2

第2節 カオリという女

 

夕方、カオリはスーパーへ買い物へ来ていた。
いつもより1.5倍の食料を買い込むと、マンションに戻り料理を作り始める。
成田カオリは今年で30歳になる。容姿端麗でファッションなど沢尻エリカを意識している。
旦那である成田は不動産売買の会社で部長をしている。顔は田中哲司似。47歳。二人の間に子供はいない。

 

玉ねぎを刻みながら、12階の住人、滝間に想いを馳せていた。
痩せ形の色白な顔立ち。長身にスラっと伸びる長い足。
バンドカラーシャツから覗かせるくっきりした喉ぼとけ。

 

旦那の成田も見た目は悪くないが、決定的な違いは清潔さだろう。
彼の、年を追うごとに漂わせてくる、臭い・思考・センス。
カオリは何年も前から全く受けつけなくなっていた。

 

夕日が高層ビル群に隠れ始めるのを認めるとそっとカーテンを仕切り、滝間はグラスにブランデーを注いだ。
葉巻を指に挟み、ハバナシガーの味を堪能すると、親指でこめかみ押さえた。
「シングルチェアの横にもう一つ何か、アンティークの類を配置するかな」
ブランデーの刺激が和らぐ頃、想像はどんどん膨らみ、滝間は満足な気分に浸っていった。

 

ピンポーン♪
チヤイムが鳴る。しかも玄関からの音色だ。
届け物は宅配BOXに任せてある。人付き合いをしない彼を訪れる者はいない。
滝間は訝しげに長い廊下を覗きこんだ。
応接間のインターホンを取ると、モニターにはカオリが映し出されていた。
滝間は顎を触り「何事だ」と頭を捻った。
玄関のドアを開ける。

 

「滝間さん。良かったあ。出ていただけて」

 

「はあ」
滝間は頭を触り、パタパタと髪の毛に空気を送った。彼特有の困惑する仕草だ。

 

「よかったら、夕食の御すそ分けです」

 

しっかりした皿に盛り付けられた料理をカオリは手にしている。

 

「よかったら」

 

「いや、その。いや、いいんですか?」

 

「いいんですよー。お一人暮らしなんでしょ?何かと大変だと思うので」

 

そう言って半ば強引に料理を滝間の手に持たせた。
カオリは料理から手を離す瞬間、滝間の手に触れ、沿うように自分の元へ引っ込めた。

 

滝間はカオリがあからさまに自分の手に触れてきたことを認めた。
ゾクゾクっとした気持ちが押し寄せてきた。
これは気持ち悪さからくるものなのか、照れなのか、自分としては珍しく判断がつかないものだった。

 

「いや、ありがとう」

 

「はい」

 

滝間がドアを閉めようとした瞬間、隙間から素足が伸びてきた。
その時、初めてカオリが短いスカートを履いていたことに気づく。
滝間は慌ててドアを止めた。

 

「あの、お皿はまた私が取りに伺いますので」

 

 

 
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